人口約42万人の大分市における1992-93年の25-74歳男女の全死亡例から、原死因が虚血性心疾患、心不全、その他の心疾患の者を抽出した。この全例321例について悉皆的に医療記録の調査を行い、モニカの基準を用いて虚血性心疾患死亡の再分類を行った。同様の方法による同一母集団である大分市の1987-88年の心疾患死亡例についての調査との比較を行ったところ、死亡統計ではこの5年間に心疾患死亡例全体で271例から321例に増加しており、特に心不全死亡が123例から180例と心疾患全体の増加のほとんどを占めていた。再分類後の比較においては、調査後、急性心筋梗塞確実及び可能性と分類されたものは1987-88年が96例中52例(54%)であり1992-93年が102例中77例(75%)とその割合が増えた。同様に心不全の中で調査後、虚血性心疾患・確実と可能性に分類されたものは1987-88年に123例中3例(3%)から1992-93年には180例中18例(10%)であった。また、急性死として分類されたものは逆に84例から80例に減少していた。男女別にみると急性心筋梗塞・確実、可能性に再分類されたものは、男性では45例から61例へ、女性では12例から36例に女性で大きく増えていた。また、急性死に再分類されたものは男性で56例から55例に、女性では28例から25例にほぼ同数で推移していた。再分類後に急性心筋梗塞・確実及び可能性である死亡例について、男女別に年齢調整死亡率を算出した。男女とも増加傾向を示しているが、男性では急性心筋梗塞・可能性に区分されたものの反映であるのに対し、女性では確実・可能性の両区分の増加の影響が考えられた。虚血性心疾患の動向をみる場合には、本調査で分類された急性死に含まれる虚血性心疾患死亡を加味する必要があり、虚血性心疾患の動向をみる上でも調査後の虚血性心疾患死亡と急性死を併せて観察する必要がある。本調査結果より、急性死の数は男女ともほぼ同数で推移しているが、これを調整死亡率でみるとやや減少傾向を示した。この急性死の死亡率を加味すれば、男性での虚血性心疾患死亡はほぼ横這いで推移しており、また女性においては増加傾向が考えられた。
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