研究概要 |
大気汚染濃度の異なる大阪市内3校,大阪市外1校の計4校と,宮崎の5校の小学生について,IgE抗体価測定,インターロイキン-2(以下IL-2)測定,保護者による自記式呼吸器症状調査,及び呼吸機能検査を行った. 呼吸器症状調査において喘息,および喘息の呼吸器症状を有する学童を対象に,IL-2の測定を行った.IL-2とIgEは相関係数が小さく相関関係が認められなかった事より,IL-2はIgE生成の直接的規定因子ではないと思われた. 大気汚染濃度別の比較として学校別にIL-2の平均値を比較した.これまでの調査で汚染濃度の異なる地域でもIgE平均値およびIgE陽性者率に差が認められなかったのに対し,IL-2は汚染が高度な地区ほど平均値が高い傾向が見られた.一方,呼吸器症状調査から得られた喘息症状が存在する児童に限ってIL-2とIgEの関係をみると、従来のアレルギー性喘息と考えられるIgE高値,かつIL-2低値の群と,非アレルギー性喘息と考えられるIgE低値かつIL-2高値の群が存在していることがわかった.さらに大阪ではアレルギー性,および非アレルギー性のメカニズムによる喘息症状有症者が存在するのに対し,宮崎にはアレルギー性メカニズムによる喘息のみしか認められなかった. これらの結果から大気汚染濃度が高度の地区における学童の喘息症状出現のメカニズムとして,IgEを介したアレルギー反応以外のメカニズムが存在している可能性があることが示唆された.
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