研究概要 |
静岡県御殿場市内の2公立中学の1989〜1991年卒業生(n=1,521)に郵送式質問紙票調査を行い,回答を得た304名に面接調査への協力を依頼した。その結果119名(男45,女74,平均年齢19.3±0.9)に構造化面接調査を行った。対象者の内,87名(73.1%)は学生であり,30名(25.2%)は就業者であった。女子2名は既婚であった。面接に対し,書面による承諾を得た。 面接は,精神科疫学研究用接票“こころの健康調査"(北村俊則)の感情障害圈病体評価部分を中心とし,他の面接部分を追加・改訂した半構造化面接票に基づいた。面接者は医学・心理学または関連領域の研究者や大学院生より構成され,4日間の説明・訓練を受けた。面接方法は1対1の直接面接法を用い,1人当り約2時間をかけて行った。精神科診断は国際疾病分類第10版の日本語版(JCM)に基づき,不安および気分障害圈の診断を行った。なお,除外診断は行わなかった。 生涯有病率は,不安障害では恐怖神経症と脅迫神経症が多く,気分障害ではその他の気分障害が最も多く,次いでうつ病挿話とそう病がほぼ同数認められた。小学生の頃,いじめにあった男子は神経障害既往率が高いなど,いくつかのライフベンツとの関連が認められた。親からの早期虚待体験では,身体的虚待より心理的虚待の方が精神障害既往との関連が強く,父親からより母親からの虚待の方が影響が大きいことが伺えた。過去1年間の運動習慣・身体活動が多い群では,有意に気分障害の12ケ月診断有病率が小さかった。身体活動はうつ病挿話とは関連していないが,その他の気分障害とは関連傾向が認められた。 以上,後期思春期/前期青年期集団の精神心理的諸問題発現の実態の一端が明らかになった。今後さらに,本対象者の中学生当時のデータとmatchingさせ,発達的な側面から精神健康状態評価や家庭環境等の基本的帰属対象との関係の影響などを検討したいきたい。
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