研究概要 |
交替制勤務に従事する中高年者の血圧,心拍変動特性などの生体情報の連続モニタリングを行い,中高年者の自律神経機能の概日リズムの特性および交替制勤務が自律神経機能の概日リズムに及ぼす影響を明らかにすることを目的に本研究を行った.菓子製造会社にて三交替制勤務に従事する55歳から65歳(平均年齢60.2歳)の中高年男性6名を対象とした.対象に対し,A&D社製TM2425を用いて,日勤(7:30〜17:00),準夜勤(16:30〜1:00),深夜勤(0.30〜8:00)の各交替勤務日について,30分毎の血圧,心電図PR間隔を36時間にわたり測定した.心電図RR間隔は30分毎に,180秒間にわたる心拍数,RR間隔変動係数,心拍変動スペクトルの0.15〜0.50Hzのパワーの積分値(HF)を算出した.コサイナ-法を用いて,血圧,心拍数,心拍変動特性の各測定値のmesor,amplitude,acrophaseを算出した.心拍数,収縮期血圧は,どの勤務日においても有意な概日リズムを認めた.心拍数のacrophaseは日勤の16:12に対し,準夜勤が18:47,深夜勤が21:09と夜勤日で後退したが,その日勤との差は勤務開始時間帯のずれより小さく,深夜勤のacrophaseは勤務時間帯以前に到来した.収縮期血圧のacrophaseは,日勤が17:58,準夜勤が19:36,深夜勤が19:43であり,準夜勤,深夜勤は日勤より頂点位相が約1時間40分後退した.心拍数,収縮期血圧,拡張期血圧のmesorには交替日による差を認めなかった.RR間隔変動係数,HFは深夜勤のみに有意な概日リズムを認め,RR間隔変動係数のacrophaseは1:54,HFのacrophaseは1:16であった.HFのmesorは日勤,準夜勤,深夜勤の順に増大する傾向にあった.特に深夜勤日には循環器系の生理機能の概日リズムと生体活動のずれが生じること,副交感神経機能の亢進がみられることが明らかになった.
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