覚醒剤による逆耐性現象の背景を明らかにするために、覚醒剤反復投与ラットにおける脳内カテコールアミンニューロンの変化について、カテコールアミンニューロンの活動の指標となる酵素であるThyrosine Hydroxylase(TH)に対する抗体及び、変性ニューロンに対するアストロサイトの反応の指標となるGrial Fibrillary Acidic Protein(GFAP)に対する抗体を用いて、免疫組織学的に調べた。ラットに覚醒剤を2〜3日おきに5mg/kgを腹腔内に投与した。この投与法により逆耐性現象が形成されることは従来の研究により明らかである。これらラットを用いて、覚醒剤最終投与から1日、3日、7日と経時的に脳を取り出し、免疫組織学的に調べた結果、ドーパミンニューロンの終末が多数存在する線条体において、ニューロンの変性は覚醒剤最終投与から1日目に既に生じており、それに対するアストロサイトの増加、肥大も観察された。またこれら変化は、3日、7日の時間経過後も明らかであった。さらに、線条体以外にも、中脳辺縁系ドーパミンシステムに属する大脳皮質において、特に前前頭葉領域におけるドーパミンニューロンの変性、アストログリアの増加、肥大が明らかであった。これらのことから、覚醒剤による逆耐性現象の形成には、従来から言われている線条体における、レセプターを含めたニューロンの変化以外に、大脳皮質のニューロンの変化が関与していると考えられ、特に中脳辺縁系ドーパミンニューロンの関与の重要性が示唆された。
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