STD系ラット雄性を麻酔後、開胸、左冠状動脈の起始部の下方で結紮、すみやかに閉胸した。結紮後、それぞれ0分、5分、10分、15分、20分、30分、45分、60分後に麻酔下で大動脈切断により出血死させた(各群とも3匹使用)。心臓を摘出、ホルマリン固定後、3μmに薄切し、シラン処理スライドガラスに貼付し、抗ユビキチン抗体およびHSP72を染色することが判明している抗熱ショック蛋白抗体を用いて免疫染色を行った。結紮後20分以上の標本については、抗ミオグロビン抗体で心筋虚血を確認した。 正立型落射蛍光顕微鏡にビデオカメラを取り付け、ステージ部分にオートスキャニング装置を組み込み、これらが同調するようにプログラムされた自動顕微測光装置を用いて、ピクセル直径40μmの円内の測光(1cm^2あたり20×20に分解)を行った。この装置により虚血部位と非虚血部位の光強度を測定してそれぞれの染色強度の平均値を求めてその比を出し(虚血指数)、0分群と各時間群との有意差の検定をStudent's t-testにより行った。 その結果、抗ユビキチン抗体染色では15分以降で、有意差があり、抗HSP72抗体染色では60分以内では有意差は認められなかった。ユビキチンは虚血早期から出現することが判明し、急性期の心筋虚血障害の病理学的診断の一助となることが明らかとなった。HSP72については今回の実験では有意差はなかったが、経時的な虚血指数の変化は明らかであり、今後検討する必要があるものと思われた。
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