研究概要 |
本研究では、三環系抗うつ剤及びフェノチアジン系の向精神薬類について、毛髪からの抽出とキャピラリーガスマトグラフィー(GC)/表面電離検出器(SID)による検出を行った。 三環系抗うつ剤7種類及びフェノチアジン系薬剤14種類について、標準品をGC-SID検出を行ったところ、前者ではimipramine, chlorimipramine, amitriptyline, trimipramineの4種類が、後者ではchlorpromazine, promazine, trimeprazine, isothipendyl, levomepromazine, trifluoperazine, promethazine, ethopropazineの8種類が感度良く検出された。薬剤の分離にはDB-1キャピラリーカラム(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)が最適であった。健常人の毛髪20mgに4種類の三環系抗うつ剤あるいは8種類のフェノチアジン系薬剤を各々500ngずつ添加し、proteinaseK30mgと0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)3mlを加えた後25℃で浸漬を行った。抽出はBond Elut Certifyカートリッジによる固相抽出法を行い、抽出した薬剤をGC/SIDで検出した。 毛髪抽出液のGC/SID検出では毛髪由来の微小な不純ピークが多数検出されたが、回収率は全ての薬剤について薬40-60%で、検出限界は注入量で薬50-150pgであった。また、GC/窒素燐検出器についても検討したが不純ピークの出現が激しく毛髪分析には不適当であった。さらに、本法を用いることによりAmitriptylineの患者毛髪からのGC/SID検出が可能であった。 今回の結果から、4種類の三環系抗うつ剤及び8種類のフェノチアジン系薬剤について、毛髪からの抽出には、proteinaseKによる蛋白消化処理とBond Elut Certifyカートリッジによる固相抽出の組合せが良好であることが明らかとなった。今後、固相抽出法の回収率の改善とGC/SIDの検出感度の向上を検討することにより本研究を完成させたい。
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