研究概要 |
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)・質量分析計(MS)(LC/MS)を用い、ヒト体組織試料中の薬毒物スクリーニング分析法を確立する目的で研究を行った。MSのイオン化はfast atom bombardment(FAB)法、インターフェースはキャピラリーチューブ(55μm,i.d.)とfritを用いた。LCはカラムスイッチングシステム・Develosil C_<18>(0.3mm,i.d.)キャピラリーカラム(濃縮・分離)を用い、ミクロ流量用に改造したシステムで行った。移動相は水・メタノール系に酢酸を加えた系をベースとし、分離は高極性から低極性物質まで検出できるようにメタノール濃度勾配グラディエントにより行った。試料の前処理は、毛髪はアルカリにより溶解させた後、その他の試料は過塩素酸により除蛋白した後(尿を除く)、Extrelutを用いて固相抽出を行った。内部標準物質(IS)として7-エチルテオフィリンを用いた。多くの薬毒物はこのグラディエント溶離により、分離・検出された。検出されたピークはISの保持時間(RT)と対比することによる相対保持時間(RRT)を求めた。化合物Xの相対保持時間RRT(X)=RT(X)/RT(IS)×1000で求めた。LC/FAB-MSにはデータベースがなく、マススペクトルが得られてもGC/MSのような検索が出来ない。今回はRRTとマススペクトルを検索ファイルに登録し、それらから検索できるように入力した。今回は血液・尿・毛髪について、ほぼいつも検出される物質、および向精神薬や睡眠薬等50の物質について登録を行った。入力データをさらに増やすことにより、今まで不可能とされてきたLC/MSによる薬毒物スクリーニング分析が実現できると考えられる。しかし、数千数万とある化合物を考えると、個人レベルでの入力には限界があり、商業レベルでのLC/FAB-MSにおけるマススペクトルパターンによる検索データベースの供給が強く求められることも再認識された。
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