研究概要 |
本研究では、ダールラットにおける腎ドパミンの産生障害が尿細管におけるドパミン産生酵素(AADC)の遺伝子発現抑制に基ずくものか否かを検討するため、食塩感受性ダールラット(以下DSと略す。)および食塩非感受性ラット(以下DRと略す。)におけるneuronならびにNon-neuron AADCmRNA(以下n.AADC,Non-n.AADCと略す。)の発現をPT-PCR法により確認し以下の結果を得た。 (1)0.3%食塩飼育下DS,DRに比較して、8%食塩飼育下で、DRでは血圧に食塩負荷による差を認めなかったが、DSでは8%食塩負荷により有意に血圧が上昇した。 (2)0.3%および8%食塩飼育下、8,12,16週令のn.AADCmRNA発現は、DS,DR両群で線状体において確認できたが、腎の皮質および髄質においては確認できなかった。線状体内n.AADCmRNA発現は、加齢および食塩負荷によっても変化を示さなかった。 (3)0.3%および8%食塩飼育下8,12,16週令のNon-n.AADCmRNA発現は、肝臓および腎の皮質および髄質において確認できた。DS,DR両群で差を認めず、加齢により発現の増大傾向を認め、さらに、8%食塩飼育下では、0.3%食塩飼育下に比してAADCmRNA発現は増大傾向を示した。また、肝臓内のNon-n.AADCmRNA発現はDSおよびDR間でも加齢および食塩負荷によっても変化しなかった。 以上の結果より、AADCmRNAの発現が、DSの食塩感受性の原因とは考えにくく、食塩負荷によるDSにおける血圧上昇はAADC活性低下によるドパミン産生量低下による尿細管レベルでのNA再吸収増大のためでなく、AADCmRNA発現増大を認めるため、DA-1受容体の減少あるいはDA-1受容体以降のシグナルカップリング異常が疑われるため、今後、DA-1受容体のIn situ hybridyzationおよび細胞内情報伝達系の研究が必要となる。
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