研究概要 |
昨年度,申請者は自らがクローニングしたhUBF全長をコードするcDNA(NOR2.8)を用い,融合蛋白を発現させ,Western blot法によりリウマチ性疾患患者血清中の抗NOR-90抗体の検出を行った。その結果,91例中9例に抗NOR-90抗体が見いだされた。うち4例が慢性関節リウマチ,3例が強皮症を有していたが,重複例も含めて7例がシェ-グレン症候群と診断されており,欧米における過去の報告とは異なる結果が得られた。本年度はNOR2.8をさらに制限酵素(Sau3Al)処理し,5つの異なるcDNA断片を得,そのうちの3つの重複しないcDNA発現産物(融合蛋白)を抗原としたELISAを開発し,患者血清とエピトープ領域との関連を追求した。hUBF分子上では,特にDNA結合部位と別の転写調節因子であるhSL1との相互作用部位に主要エピトープが含まれ,特にDNA結合部位との反応性が他の部位に比し高いことが確認された。なお陽性患者が未だ少数であるため,エピトープ反応性と臨床症状との有意な関連は見いださなかったが,強皮症患者ではエピトープが限られているのに対し,シェ-グレン症候群患者においてはその反応性が多様であると考えられた。さらにin vitro transcription assayを用い,抗NOR-90抗体陽性患者血清から抽出したIgGによるリボソームRNAの転写抑制能を調べたが,抗RNA polymerase I抗体に比し,抑制能が弱い可能性が示唆された。エピトープ反応性と転写抑制能との関連は明らかではなかった。ただし,血清中に含まれる抗NOR-90抗体の濃度が抗RNA polymerase I抗体に比し低い可能性が考えられるため,抽出したIgG濃度を濃縮(または希釈)し,転写抑制能の変化を確認する予定である。
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