研究概要 |
我々は大脳誘発電位法を用いて、食道における内蔵感覚の評価を試みた。 対象は、器質的異常を伴わない胸痛、胸やけ、吐気などの食道由来と考えられる症状を認める患者で、これまで9例の患者(男性3例、女性6例、18-65才)に施行した。 方法は、電気刺激ブローベを装着したチューブを食道胃接合部より5cm口側に留置し、電気刺激装置を用いて、被検者が違和感を感じるまで0-20mAまで2mAごとに、200μsecの矩形波を1Hzで刺激した。脳波は国際標準10-20システムに従い、FZを基準電極とし、Cz,Pz,C3,C4,P3,P4から双極導出し、日本電気三栄社製EEG 1A-92を用いて、時定数0.15秒、High Cut Filter1500Hz、電極抵抗5KΩ以下で記録した。電気刺激時は開眼状態で標識を凝視させた。DataはTEAC社製datarecorderに記録しA/D変換の後、日本電気三栄社製Signal Processer 7T-18を用いて、解析時間512msecで20回加算平均して誘発電位を得た。また、自覚的な感覚閾値も同時に測定した。 結果は、9例中6例に刺激後潜時50〜150msecにおいて陰性-陽性-陰性の3相波を認めた。しかし残る3例については、刺激による誘発電位を得ることはできなかった。感覚閾値についてみると、感覚閾値が20mA以上の高閾値例が、誘発電位が得られた群では1例のみであったのに対して、得られない群では3例全例であった。 以上より、食道電気刺激による大脳誘発電位法は、食道の内蔵感覚を客観的に反映する指標になり得ることが示唆された。
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