研究概要 |
肝腺腫様過形成(AH)が肝細胞癌へと進展する危険因子を明らかにするため、組織学的所見および画像診断で評価した血行動態と結節の予後との関連性について検討した。 対象は一年以上経過観察できたAH22結節とした。これら22結節は平均観察期間25.4ヶ月において4結節が肝細胞癌へと進展(H群)し、他の18結節は不変あるいは消失した(N群)。組織学的検討は核密度、小細胞性ディスプラジア、大細胞性ディスプラジア、偽腺管構造、淡明細胞化、核の類洞側偏位、脂肪化、細胞質の染色性変化、鍍銀繊維の減少について検討した。画像診断による血行動態の評価は、動脈血流の増加を血管造影での腫瘍濃染とdynamic CTの早期濃染により、門脈血流低下は門脈造影下CT(CT-AP)上の低吸収域の有無により判定した。 結節部の核密度はH群、N群でそれぞれ2059±549/mm^2,1597±3351mm^2とH群がN群に比し有意に高かった(p<0.05)。また、小細胞性ディスプラジアがH群3/4(75%)、N群4/18(22%)とH群に多い傾向にあった(p=0.08)。脂肪化はH群4/4(100%)、N群4/18(22%)とH群に有意に多く見られた(p<0.01)。他の組織学的所見には差はなかった。動脈血流増加の所見はいずれの結節にもみられなかった。一方、門脈血流の低下はH群の4例中2例(50%)に、N群の18例中2例(11%)とH群に高率であったが有意ではなかった。 以上より、肝硬変にみられた結節性病変より採取した生検組織において核密度の増加、小細胞性ディスプラジア、脂肪化がみられた場合には肝癌へ進展するリスクの高い結節として対処すべきと考えられた。また、CT-AP上門脈血流の低下がみられる結節についても注意が必要と考えられた。
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