研究概要 |
大腸癌の組織発生,浸潤・転移機序を明かにする目的で,早期癌から進行癌への過渡的形態を有し表面型起源かポリ-プ起源かの判定が可能である最大径30mm以下の小さな進行大腸癌を対象に癌抑制遺伝子p53蛋白及びKi-67の発現を検討し,以下の結果を得た。 1.p53蛋白の発現を免疫組織学的に癌浸潤先進部で検討した結果,表面型起源・ポリ-プ起源病変の間に有意な関連はなかった。しかし,p53蛋白の発現は浸潤先進部の組織学的分化度,癌深達度とは有意な関連を示した。また,リンパ節転移陽性例は陰性例と比較してp53蛋白の発現率が高い傾向にあった。 2.癌細胞増殖活性の指標であるKi-67標識率(LI)を浸潤先進部で検討した結果,Ki-67LIは潤先進部の組織学的分化度と有意な関連があった。Ki-67LIは腫瘍径が大きい程高い傾向があった。径15mm以下の病変は16mm以上の病変よりもリンパ節転移が有意に高率であったが,Ki-67LIは逆に有意に低値であった。また,p53蛋白陽性例は陰性例と比較して有意にKi-67LIが高値であった。 3.k-rasのpoit mutationを病変の起源別にPCR法で検討中であるが,現在のところ,症例収集,条件設定などの基礎検討の段階である。 以上,p53蛋白及びKi-67の発現は,表面型起源がポリ-プ起源かで有意な関連はなかった。p53蛋白とKi-67の発現の間には有意な関連が認められた。最大径15mm以下の小さな進行大腸癌は,大きな病変よりもリンパ節転移率が有意に高く,Ki-67LIが低く,一般の大腸癌とは異なった特性を示し,特殊な病変群であると考えられた。
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