1、M鎖を含むLaminin (Merosin)の肝臓での発現 ラット肝切除による再生肝および四塩化炭素による急性傷害肝モデルにおいて、免疫組織化学的に12-24時間後に肝実質細胞にmerosinの強い発現が認められ、以後漸減した。また、ヒトの急性肝炎組織においても、肝細胞に同様の強い発現がみられた。次にラット肝臓よりコラゲナーゼ還流、percoll密度勾配法にて肝実質細胞、伊東細胞、内皮細胞を分離培養し、それぞれの細胞を免疫染色してみると、いずれの細胞にも発現が認められたが、肝実質細胞にIL-1β、TNFα、TGFβ等のサイトカインを加えると、IL-1β、TNFαにより培養液中のmerosinの増加がみられた。 2、M鎖を含むLaminin (Merosin)の肝細胞接着、増殖に対する影響 MerosinおよびマウスEHS肉腫由来のlaminin (EHS laminin)を培養皿にコートし、その上に初代肝細胞を培養し、接着能を培養24時間後のMTTassayで、増殖能を経時的なBrdUの取り込み率で検討した。接着能に関しては、merosinはEHS lamininの約1.5倍高く、増殖能も培養3日目まで1.5倍優れていが、その後は有為な差はみられなかった。 以上のことから、merosinは従来のlaminin (EHS laminin)と異なり、肝再生や急性肝傷害時に炎症性サイトカインの刺激により主に肝実質細胞から産生、分泌され、それ自身が肝細胞周囲に沈着することにより、肝細胞増殖の初期相に促進的に働いているものと考えられた。今後は遺伝子レベルでのmerosinの発現動態および制御因子の解析を行う予定である。
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