研究概要 |
消化管粘膜での免疫防御機構に小腸パイエル板へのリンパ球homingが重要である。この過程即ちpostcapillary venule(PCV)への接着及び接着後のパイエル板内へのリンパ球migration及びリンパ管への転送において、中枢末梢神経系で産生される免疫制御物質であるVIP,及びneurotransmitterであるsubstance-Pの役割を蛍光色素CFSEでラベルしたリンパ球の動的観察を蛍光生体顕微鏡を用いて行いin vivoで以下につき検討した。 1)リンパ球表面の接着分子の発現に対し神経内分泌ホルモンがどの程度影響するかin vitroでのincubationにおいて検討した。リンパ球表面にVIP, substance-Pを10^<-8>,10^<-9>,10^<-10>M添加しLEA-1,VLA-4,LECAM-1の発現の変化を測定した。何れの接着分子も有意な変化を認めなかった。 2)リンパ球-PCV内皮interactionにおいて上記の各ホルモンがinteractionのどの過程に影響するかin vivoで観察した。VIP, substance-Pと10^<-8>,10^<-9>,10^<-10>Mでincubationしたリンパ球を投与した観察ではrolling, stickingへの影響を認めなかった。更にVIP, substance-Pを10ng/kg/min,1ng/kg/minでラット頚静脈から持続注入し、注入開始1時間後に標識したリンパ球を注入した観察でもリンパ球のrolling, stickingに影響を認めなかった。 3)リンパ球の血管内皮への接着後のtransendothelial migrationやinterstitiumへのmigration,更にリンパ管への転送過程において各ホルモンがどのように影響するかin vivoで観察した。VIP, substance-Pと10^<-8>,10^<-9>,10^<-10>Mでincubationしたリンパ球を投与した観察ではtransendothelial migration、interstitiumへのmigration,更にリンパ管への転送過程を有意に抑制した。それに対しsubstance-Pは同様の過程を有意に促進した。更にVIP,substance-Pを10ng/kg/minでラット頚静脈から持続注入し、注入開始1時間後に標識したリンパ球を注入した観察でも同様であった。 以上よりリンパ球のhoming過程においてVIP, substance-Pは血管内皮上のrollingからstickingに影響を及ぼさず、transendothelial migrationからリンパ管への転送にはVIPは抑制的に作用しsubstance-Pは逆に促進的に働くことが明かとなりこの機序に細胞接着分子の関係は少ないことが明らとなった。
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