【目的】経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(TIPS)は新しい門脈圧亢進症の治療法として注目されている。本法は臨床的に極めて有用であるが、その手技は比較的難しい。中でも穿刺針による門脈穿刺は、手技中最も時間を要し、かつ、合併症を生じやすい段階である。今回我々は、安全かつ確実な門脈穿刺法を確立ために血管内超音波装置を用いた検討を行った。【対象】TIPSを行った肝硬変5例。【方法】今回は本法をTIPSの術前検査として行った。本検査時には体外超音波検査も併用した。又、別の日には肝静脈造影と経動脈性門脈造影の同時造影を行い肝静脈と門脈の二次的解剖学的関係を検討した。まず、右内経頸静脈より右肝静脈へ留置したシース内に、血管内超音波装置に接続したイメージングカテーテルを挿入し、肝静脈より見た右門脈系の把握を行った。次いで、門脈を安全に穿刺するのに適したポイントを検討するために、右肝静脈下大静脈接合部より末梢方向へ1cmごとの血管内超音波像を作製し、体外超音波像、血管造影像などとの対比を行った。【成績】(1)対象全例において、事前の血管造影で穿刺目標とされた門脈1次分岐あるいは2次分岐を血管内超音波により同定可能であった。(2)この内の3例において、ステントを留置するのに最も適した門脈部と肝静脈部の解剖学的関係が本法により明らかとなった。即ち、穿刺を開始する肝静脈の部位の決定、穿刺針の回転角度、門脈までの距離などが正確に判明し、TIPS手技に際し有用な情報となった。(3)こうした情報は、術前の血管造影、体外超音波に比べ本法の方が優れていた。【考察】本法により、最適な穿刺部位および穿刺方向の決定が容易となることから、今後、TIPS術中に行うことにより、手技時間の短縮、合併症回避がもたらされると考えられる。しかし、画像解析能の向上、耐久性の向上など細部には検討すべき余地が存在する。
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