研究概要 |
アルコール脱水素酵素系以外でのアルコール(AL)代謝のkey enzymeはcytochrome P4502E1(2E1)であり、2E1には遺伝的多型性が存在し、その型別によって転写活性の異なることが知られている。Chlorzoxasoneは2E1で特異的に代謝されるので、2E1の遺伝子型での代謝の特徴とAL性肝障害との関連を検討した。まず、AL性肝障害患者28例、非AL性肝障害患者22例および健常者26例について、2E1の遺伝的多型性の分析を行った。健常者では、c1 geneのhomozygote(type B)が8例(31%)にみられたが、c2 geneのhomozygote(type C)は1例もみられなかった。AL性肝障害患者では、3例にtype Aを、24例にtype Bを、1例にtype Cを認めた。一方、非AL性肝障害患者では、14例がtype A、8例がtype Bであった。次に、これらの症例について、chlorzoxazone 400mgを経口投与し、投与後30分、60分、120分および180分に採血してchlorzoxazone代謝を測定した。検討しえた症例は、健常人10例(type AおよびBが各5例)、AL性肝障害患者が16例(type Aが2例、type Bが14例)、および非AL性肝障害患者が10例(type Aおよびtype Bが各5例)であった。また、AL性肝障害患者の10例では、禁酒直後と禁酒4〜5週後の2回にchlorzoxazone負荷試験を行い、飲酒による2E1の誘導の差によるchlorzoxazoneの代謝能の変化についても検討した。Octylsilyl 5-umZorbax column(Du Pont, Dreiech, FGR)を用いた高速液体クロマトグラフィで血中chlorzoxazoneおよびその水酸化物である6-hydroxychlorzoxazone濃度を測定して代謝率を算定すると、type Bでのchlorzoxazoneの代謝率は、type Aでのそれに比して高い傾向が認められた。すなわち、chlorzoxazoneの代謝率から2E1の誘導状況を推定すると、type Aに比してtype Bで強く起こることを示唆する成績が得られた。また、禁酒4〜5週後のchlorzoxazone代謝率は禁酒直後のそれよりも明らかに低くなっていたが、2E1の型別での低下の差は明瞭ではなかった。現在、より正確な結論を得るために症例数を増して検討を行っている。
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