肝硬変(LC)における門脈圧亢進と胆嚢壁の形態的変化および胆嚢収縮能の関係を明らかにするため、実験的肝硬変ハムスターを用いて以下の検討を行った。 雄性ハムスターに0.04%thioacetamide (TAA)水溶液を48週投与し、肝硬変モデルを作製した(LC群)。対照群には水道水を与えた。 1)門脈圧測定 LC群の門脈圧は対照群に比べ、有意に上昇していた。 2)胆嚢収縮能の検討 ceruletide diethylamine 0.02μ g/100gを静注し、経時的な胆嚢収縮率を測定した。経過中の全てにおいて、LC群の胆嚢収縮率は対照群に比べ低下していた。 3)胆嚢の光顕的、電顕的観察 LC群では対照群に比べ胆嚢壁の肥厚と脈管の拡張が明らかであった。内皮細胞の形態より、拡張した脈管はリンパ管と毛細血管であると考えられた。 4)胆嚢組織の形態計測 胆嚢壁の肥厚は任意の部位(50/animal)での胆嚢壁の厚さ(胆嚢上皮〜漿膜)を測定し評価した。対照群に比べ、LC群では有意に胆嚢壁の厚さは増加していた。また、胆嚢壁の厚さと門脈厚は高い相関を示した。 脈管面積を二次元形態測定装置にて測定後、その総和を脈管の数で除し、脈管一個当りの面積を算出して、胆嚢壁の脈管拡張を評価した。対照群に比べ、LC群では有意に脈管面積は増加していた。また、脈管面積と門脈圧は高い相関を示した。 以上の結果から、TAA投与による肝硬変ハムスターにおいて、門脈圧亢進が胆嚢壁の脈管のうっ滞状態を惹起し、胆嚢壁肥厚や収縮能低下を引き起こす要因の一つと考えられた。
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