研究概要 |
ヒト好中球によるヒト肺血管内皮細胞障害は、内皮細胞より漏出するLDHおよび予め内皮細胞に封入させたFura-2の漏出により評価するシステムをまず確立した。ヒト好中球は、ヒト血管内皮細胞に接触すると内皮細胞障害を惹起し、好中球をN-formyl-methionyl-leucyl-phenylalanine(fMLP)やphorbol myristate acetateで刺激するとその障害は増強された。これらの障害はsuperoxide dismutase(SOD)やprotein kinase C阻害剤であるstaurosporineによって軽減された。またcyclic AMPの膜透過性のアナログであるdibutyryl cyclic AMPはfMLP刺激好中球による内皮細胞障害は軽減し、PMA刺激好中球による障害は軽減しなかった。 従って好中球による内皮細胞障害にはスーパーオキサイドが関与していることが確認された。Adult respiratory distress syndromeや虚血再灌流障害などの病態には好中球による内皮細胞障壁が関与していることが知られているが、SOD,staurosporineやdibutyryl cyclic AMPなどの生体に投与するのは困難である。そこでマクロライド類抗菌剤、特にエリスロマイシンのヒト好中球スーパーオキサイド産成に対する効果を検討した。その結果、エリスロマイシンはcyclic AMP-dependent protein kinaseの作用を介してスーパーオキサイド産成を抑制している事が明らかとなった。(誌上報告済)。この結果を踏まえ、好中球による内皮細胞障害に対するエリスロマイシンの作用を検討した。エリスロマイシンはSOD,staurosporine,dibutyryl cyclic AMPなどを凌ぐ内皮細胞保護作用を示した。これはエリスロマイシンの好中球スーパーオキサイド産成に対する作用のみでは説明できず、好中球の脱顆粒や内皮細胞に対する作用についても現在検討中である。
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