研究概要 |
1.細胞外マトリクスであるコラーゲンと密接な関係がある接着分子について検討した。今回申請した酸素濃度可変型インキュベータ-(Personal Multi Gas Incubator: Astec社製)を用い,人肺動脈血管内皮細胞(human pulmonary artery endothelial cell: HPAEC)および人臍帯静脈血管内皮細胞(human umbilical vein endothelial cell: HUVEC)に90%酸素を暴露した.接着分子の一つであるintercellular adhesion molecule-1(ICAM-1)の発現をフローサイトメーター法およびRT-PCR法により検討した。HPAECおよびHUVECのいずれの細胞においても,90%酸素暴露48および72時間後においてICAM-1蛋白およびメッセンジャーRNAの発現の増加を認めた. 2.高濃度酸素暴露によるICAM-1発現の調節機序を検討した.抗酸化剤であるスーパーオキサイドヂスムターゼ(SOD),カタラーゼ(CAT)およびN-アセチルシステイン(NAC)のICAM-1発現に及ぼす影響を検討した.SODはICAM-1発現に影響を及ぼさなかった.しかしながら,CATではICAM-1の発現増加を,NACではICM-1の発現減少を認めた.また、ICAM-1の発現と細胞外のグルタチオン濃度が負の相関を持つことがわかった. 3.ICAM-1発現に及ぼす細胞外グルタチオンの影響およびICM-1発現と細胞内グルタチオンの関係を検討した.還元型グルタチオンの細胞外への添加は,高濃度酸素暴露により誘導されるICAM-1の発現を抑制した.一方,酸化型グルタチオンは,ICAM-1発現に影響を及ぼさなかった.ICAM-1発現増加を起こす高濃度酸素暴露およびCAT添加時において細胞内グルタチオンが増加することがわかった. 4.現在,HPAECおよびHUVECにおけるコラーゲン産生について検討している.また,肺胞上皮細胞および線維芽細胞の分離同定を試みており,これらの細胞における接着分子発現調節およびコラーゲン産生を検討する予定である.
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