研究概要 |
気道分泌亢進における気道上皮杯細胞および粘液細胞の病的増加には、Mucin遺伝子の発現が重要な役割を果たしており、この発現調節機構を探るため、気道と腸管で発現するラットMUC2 mucin cDNAおよびgenomic DNAをクローニングした。ラットMUC2 mucin遺伝子プロモーター領域には、TATA boxおよびSP-1,NF-kB,AP-1などの転写制御因子の認識可能なエレメントを認めた。Mucin遺伝子の転写調節機構について検討するため、遺伝子上流域のプロモーター活性をCAT assayを用いて調べた。 転写開始点より上流859bpより順次欠失させたプロモーター領域をレポータープラスミドとしてクロラムフェニコールアセチル化酵素(CAT)の上流に接続し、ムチン産生ヒト大腸腺癌細胞株(HM3胞)、自然にトランスフォームしたラット気管上皮細胞株(SPOC1細胞)およびネガティブコントロールとしてマウス線維芽細胞(NIH3T3細胞)にエレクトロポレーション法によりトランフェクションしCAT assayを行った。腸管において、プロモーター活性はプロモーターの方向性に依存することがわかった。859bpより295bpさらに、186bpまで欠失させるとCAT activityは低下し、転写開始点より上流の295bpから186bpまでの間には転写活性を正に制御する領域(positive acting region)の存在が示唆された。98bpより3'側の部位には基本調節エレメントの存在が示唆された。 ラットの気管上皮細胞であるSPOC1細胞においては、腸管とは違うパターンの活性を認め、98bpより上流には転写に対し抑制的に働く因子の存在が示唆された。気管において、98bpより下流の領域が転写活性に重要な役割を持っていると考えられた。 これらの結果より、rMUC2ムチンは腸管と気管においてそれぞれ異なる組織特異的転写調節機構が存在する可能性が考えられた。
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