脳虚血再潅流障害のおいてフリーラジカルが深く関与していることは従来から指摘されている。一般にフリーラジカルは半減期が短くて反応性に富むためin vivoでの測定が非常に困難であり、これまでの報告はほとんどがin vitroでのデータであった。今回我々は光学顕微鏡と過酸化水素(H_2O_2)指示性の蛍光色素Dichlorofluorescin (DCFH)を用いて、全脳虚血再潅流時におけるin vivoでの細胞内ROS (Reactive oxygen species)の経時的測定を試み以下の結果を得た。対象とした20匹のSDラットを以下の3群(A群: 虚血再潅流群(10例)、B群:SHAM手術群(5例)、C群:カタラーゼ前投与後虚血再潅流群(5例))に分け検討したところ、10分間の全脳虚血(両側総頚動脈閉塞および全身低血圧)中にはROSは増加することなく3群間に有意差を認めなかった。しかし再潅流後にはROSの急激な増加を認め、既に再潅流2分後よりA群はB群に比し有意な増加(9.82±5.79% vs-2.82±2.51% ; p<0.05)を認め、その有意な増加は再潅流30分後(18.38±9.77% vs-3.58±4.20% ; p<0.05)まで持続した。C群では再潅流後にカタラーゼによりROSの増加が抑えられ、その抑制は再潅流10分後より有意(1.77±4.57% vs12.67±6.15% ; p<0.05)であった。今回の結果からは脳虚血再潅流時のOxidative Stressは虚血中は明らかでなく再潅流時の極めて早期より認められ、少なくとも再潅流30分間は持続すること、及び腹腔内に前投与したカタラーゼによってかなりのOxidative Stressが軽減されることが示された。
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