研究概要 |
α-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体(KGDHC)はTCAサイクルの最も重要な酵素のひとつであり,特に脳ではTCAサイクルの律速段階として機能しているとされる.本酵素は3つの酵素の複合体から構成される.このうちE2はKGDHCの構造上核となっている酵素である.KGDHC E2遺伝子は15個のエキソンで構成される. SSCP法により各エキソン毎に解析した結果エキソン8とエキソン14にそれぞれ2種の多型を見いだした.シークエンシングの結果それらはいずれも1塩基置換によるアミノ酸変異を伴わない多型であった.そこでエキソン8における多型とパーキンソン病発症との関連分析をパーキンソン病患者群187例およびコントロール群232例例を対象サンプルとしておこなった,ここでは便宜上頻度のより多いものををallele A,少ないものをallele Bと呼ぶ.コントロール群ではallele Bの頻度が29,5%であったのに対し,パーキンソン病患者群では40.9%でありこの差は統計学的にも有意であった. 同定したKGDHC E2遺伝子内多型はマーカーとして利用可で,関連分析の結果,同遺伝子ないしこの多型と強い連鎖不均衡をもつDNAの変異がパーキンソン病発症に関する遺伝的要因の一つである可能性を支持する. イントロン1にふくまれる3組のダイレクトリピート構造については,同構造の周囲が非常にGCに富む領域であるためか,SSCPやFragment解析に利用し得る特異性の高いPCR産物をうることができず,解析できなかった.今後に課題として残されている.
|