研究概要 |
Algerian3例,French1例,FrenchとArabの混血1例,日本人3例,計8例のadhalin欠損症例の生検筋を,dystrophin,各種dystrophin結合蛋白,laminia α1鎖,β1鎖,β2鎖,γ1鎖に対する特異抗体を用いて染色し,それぞれの蛋白の発現を検討した.その結果Algerian3例のうち2例,FrenchとArabの混血1例中1例,日本人3例中1例、計4例の筋細胞周囲基底層にlaminin β1鎖の減少と,β2鎖の過剰発現を認めた.これらの症例はいずれも歩行不能となった進行例であり、laminin subunitの発現に以上を認めなかった4症例がいずれも歩行可能な軽症例であることと対照的であった.この結果からadhalin欠損症では,進行期にdystrophin糖蛋白複合体のlaminin receptorとしての機能不全からlaminin subunitの発現に異常を来すものと考えられた、またここで検討した日本人症例1例を含む家系について遺伝子異常を同定した.これは17q12-21.33に存るadhalin遺伝子の点突然変異で、C229Tの塩基置換でArg77Cysのアミノ酸置換を来す。 homozygousなmissense変異であった.これはadhalin分子の大きな細胞外ドメインの中程で,Cysへの置換である事から2次構造,3次構造の変化を伴う事が予想され,これにより細胞外基質との相互作用の異常を来す可能性が考えられた.今後さらに多数の症例について,遺伝子異常と蛋白発現の異常を対比して検討する必要があると考えられる.
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