〈方法〉Vascular Cell Adhesion Molecule(VCAM)-1遺伝子の転写調節領域に存在するNF-κB様塩基配列をもとに、double strand DNAを作成しこれをprobeとした。ヒト臍帯静脈内皮細胞を培養し、tumor necrosis factor(TNF)-αで刺激し、NF-κBの活性をelectrophretic mobility shift assay(EMSA)にて検討した。NF-κBの阻害薬剤としてプロテアーゼインヒビターであるTPCK(Tosyl-Phe-chloromethylketone)を用い、これがNF-κBの活性化機構にどの様な影響を及ぼすかを前述のprobeを用いてEMSAで検討した。〈結果〉TNF-αで刺激された細胞の核抽出物を用いた検討ではTPCK(25μM)はTNF-αによるNF-κBの活性化をほぼ完全に抑制した。非刺激ヒト臍帯静脈内皮細胞からの核抽出成分と、TNF-αで刺激されたヒト臍帯静脈内川細胞からの細胞質抽出成分とを混合すると著名なNF-κBの活性化を認める事が観察された。ATPによる試験でこのNF-κBはTNF-α刺激後の細胞質成分に存在することが判明した。TNF-αで刺激する前にTPCK(25μM)で処理した後に細胞質成分を抽出し、これを核抽出成分と混合してもNF-κBの発現は認められなかった。また、TPCK(25μM)で前処置した後に抽出された核抽出成分と、TNF-αで刺激された細胞からの細胞質抽出物を混合してもNF-κBの活性は認められなかった。〈結果〉TNF-αで刺激した細胞の細胞質成分にはまだNF-κBが存在していること。NF-κBの発現には細胞質内、核内の各々におけるプロテアーゼ活性が必須であることが示唆された。
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