研究概要 |
【目的】心筋虚血を誘発するショックにおいてIK. ATPが活性化され、ショック時の心筋虚血巣の拡大を軽減しているか否かを検討する。【方法】1)麻酔開胸犬12頭中6頭をレザヴァーを用いて脱血し、平均血圧40mmHgの出血性ショック(HS)を作成した。IK. ATP阻害薬グリベンクラミド(GLB、1mg/kg静注)投与前後で冠血流量および局所心筋血流を測定し、対照群の6頭(平均血圧118±11mmHg)と比較した。2)他の11頭(GLB投与n=6、非投与n=5)では、HS作成10分後に拍動心を短軸面で高速切断凍結した。心断面のNADH蛍光により心筋虚血を可視化し、GLBの心筋虚血巣の大きさに対する影響を検討した。また蛍光領域、非蛍光領域においてサンプリングを行い、乳酸およびATPの濃度を測定した。【結果】1)GLB投与により、HS群では冠血流量が85±10%に減少した(p<.05)。これは心外膜側血流の選択的減少によるものであった。一方、対照群では冠血流量および局所心筋血流量に有意な変化はなかった。2)GLB非投与群では蛍光領域(虚血領域)を左室断面の26±31%に認め、心内膜側優位の分布を示した。GLB投与群では虚血領域は78±20%に増加し(p<.01)、分布は貫壁性となった。蛍光領域の乳酸濃度は非蛍光領域に比して有意に高値を示し(37±16vs.13±10nm ol/mg-prot., p<.01)、蛍光領域の心筋虚血が確認された。GLB投与群の心外膜側にATP濃度はGLB非投与群に比して有意に低値であった(30±8vs.43±6nm ol/mg-prot., p<.01)。一方心内膜側ではGLB投与群、非投与群間にATP濃度に差はなかった(41±6vs.44±6,NS)。【総括】出血性ショックではIK. ATPが活性化され、心外膜側への虚血の進展を防止することが明らかとなった。
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