研究概要 |
1.目的:心室細動の治療には、心臓に直流通電を行う電気的除細動法が有効であるが、現段階では、細動停止エネルギーが高く、通電による心筋への傷害の発生といった問題が生じている。この問題解決には、通電と細動の関係の解析が重要となる。本研究は、通電前後における不応期変化が細動の発生・停止に大きく影響しているという新しい観点に基づき、心表面の多数点から興奮の開始及び終了に対応する電位波形を計測し、興奮の開始と終了の時間差として算出した不応期から不応期Mappingを行うことが可能な装置の開発を目的とした。 2.方法:心臓表面から興奮開始に対応したQRS波,及び興奮終了に対応したT波を計測可能な新しいModified Bipola電極、及び通電の影響を低減させるために心臓とアンプを切り離す機構を内蔵した16点計測アンプを開発した。また、計測した電位を16チャンネル高速A/D変換ボードで入力するためのソフトウエアを開発した。このソフトウエアは、電位波形の表示・解析と同時に、興奮及び不応期Mappingを行う機能も有するものとした。 3.結果:開発した装置を用い動物実験を行った。実験ではLangendroff灌流下のモルモット心臓の心先部にペーシングを行い、ペーシングからの連結期及び電圧を変化させ直流通電を心室左右から行い、その時のQRS波並びにT波を開発した装置により計測した。実験の結果、ペーシング時では興奮伝播はほぼ均一であったが、不応期の分布は不均一であった。通電後においては、不応期の分布の空間不均一性が更に拡がっており、この不均一性の増加が細動発生に関与しているのはないかと考えられた。以上の結果から、通電前後におけるQRS波並びにT波の計測及び、不応期Mappingの作成が可能であり本装置の有効性が確認された。今後は更に研究を進め、計測点の増加及び、データ解析ツールの開発等により、通電と細動の関係の解析が進むと考えられる。
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