子宮内発育遅延(IUGR)患児3名およびその両親を対象とし、11p15領域に存在するIGF2とH19のDNA塩基配列の多形性を以下に述べるPCR-RFLPs分析法で解析し、患児の11p15領域の親起源を検討した。本研究の実施にあたり、対象およびその保護者には同意を得た。まず、IUGR患児およびその両親の末梢血リンパ球よりDNAを抽出し、PCR法にてH19DNA、IGF2DNAを増幅した。得られたPCR産物H19DNAを制限酵素Alu I、Rsa Iで、また、IGF2DNAを制限酵素Apa I、Hint Iで消化し、ゲル電気泳動をした。H19/AluI、H19/Rsa I、IGF2/Apa I、IGF2/Hint I多形性をもとに、患児の11p15領域の親起源について検討した。 IUGR患児3名から得られたH19/AluI、H19/Rsa I、IGF2/Apa I、IGF2/Hint Iの遺伝子多形性、父および母から得られた遺伝子多形性と共通しており、母から得られた遺伝子多形性のみ検出された患児はいなかった。したがって、この研究では母由来の11p15領域を2コピーを有するIUGRの存在は確認されなかった。IUGRの原因としてIGF2、H19ら胎児成長に関与する遺伝子の異常が関与している可能性および11p15領域でのWBSに対応する新たな疾患(症候群)の存在の可能性は示唆されなかった。
|