当科で経過観察中のHCV感染小児60例のうち、80%は輸血に関連した感染であったが、その他の20%は母子感染による感染と考えられた。母子感染と考えられた12例のうち6例は出生時から前方視的に母子感染が証明された症例であり、それ以外の6例は乳児期から幼児期に児の感染が見いだされ家族調査と詳細な問診により母子感染と推定された症例である。これらはいずれも母子ともにHCV-RNAが検出され、genotypeも一致していたが、うち前方視的に見いだされた母子感染症例の1例の母と児からPCR法により、HCV-RNAのE2/NS1領域を中心に増幅後クローニングを行いdideoxy法(Sanger法)により塩基配列を決定し、従来報告されている配列とともに近接接合法により分子系統樹を作成した。母と児から検出されたクローンはいずれも近接し、またdiversityを比較したところ母の方が大きいことから母子感染が証明された。またretrospectiveに見いだされた症例も同様に母子の血清中のHCVのクローンを解析したところ母児間で近接し、また同様にdiversityは母の方が大きく母から児への感染が証明された。現在その他の母子のペアの解析を進めているところである。 HCVは血清中でビリオンや免疫複合体の形態で存在し、HCVの感染性や肝障害と関連があることが知られている。血清中HCVの浮遊密度を超遠心を用いて調べ、HCVの存在形態を検討した。現在母親の肝機能との関係を調べたところ肝障害が認められた前後で、ビリオンから免疫複合体への変化が認められ、肝障害が認められた後にウイルスの中和現象がおこったと考えられた。今後母子感染の感染成立の要因として、ビリオンや免疫複合体などの存在様式とHCVの感染性の関連を検討する予定である。
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