研究概要 |
骨髄移植(同種骨髄移植、自家末梢血幹細胞移植)患者におけるヘルペスウルス感染について、DNA PCR(Polymerase chain reaction)法を用いて検討を行った。 対象は、同種骨髄移植5例、自家末梢血幹細胞移植5例、計10例である。 患者よりヘパリン加骨髄液と末梢血を、移植前および移植後経時的に採取し、DNAを抽出し、PCR法にて7種のヘルペスウイルス(HSV1,2,VZV,EBV,CMV,HHV6,HHV7)ゲノムの検出を行った。同種骨髄移植では、ドナーの検討も行った。 HSV,VZVは、患者およびドナーのいずれも検出されたものはいなっかった。これらのウイルスは、リンパ球を含む血液細胞にも感染しうる(特に免疫不全状態で)との報告もあるが、その頻度は非常に低いものと思われた。EBVは、骨髄移植以外の臓器移植において、その再活性化によるリンパ増殖性疾患が問題になっているが、骨髄移植においてはその頻度は低く、今回検討した症例でも2例で陽性となったもののいずれも不顕性であった。CMVは、3例(いずれも同種)の患者の移植後陽性になった。そのうち1例は、抗生剤に不応性の発熱がみられたガンシクロビルを使用し、その後陰性となった。この症例は、PCR法が早期発見早期治療に寄与したものと言える。HHV6は、移植後早期に再活性化し発疹症を呈したり、また間質性肺炎の原因との報告があるが、今回検討した症例では陽性となったものはなかった。HHV7は、年長児および成人では広く浸淫しているものと思われる。検討した3例中2例で陽性であったが、健康なドナーも1例陽性であり、PCR法の結果の解釈に関しては今後さらに検討が必要と考えられる。 ヘルペスウイルスはヒトに常在しており、その再活性化には、宿主のウイルス特異的細胞性免疫の低下が必要であり、また、骨髄を移植することによる感染の可能性があり、今後これら両者を考慮しながら検討を進めていかなければならないと思われる。
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