我々は、精神遅滞の原因遺伝子の解明を目的に研究を行っている。その目的のために、家族性の精神遅滞、特にX染色体連鎖性を想定させる患者や抽出し、既知のものである脆弱X症候群をスクリーニングしその頻度を明らかにすると共に、脆弱X症候群や神経変性疾患で病因となっている、三塩基反復配列の延長による疾患が他にも存在すると想定し、三塩基対叛服配列を持つ遺伝子をクローニングし、脆弱X症候群以外の家系においてクローニングされた遺伝子の異常の有無を解析する、という方法にて研究を行った。 その結果、 1。栃木県の乳児検診受信および自治医科大学小児科外来受診者の中から、男児兄弟あるいは男児兄弟あるいは男児と母親などに精神遅滞があり、X染色体連鎖性を想定させる家族性精神遅滞が35家系抽出された。 2。それらの家系において、脆弱X症候群のスクリーニングを行った。脆弱X症候群には、遺伝子異常として、FARX-A以外に、近年FRAX-Eの異常も報告されており、両者について、サザン法及びPCR法にて患者のスクリーングを行ったが、脆弱X症候群は検出されず、日本人においてその頻度は低いことを明らかにした。 3。ヒト胎児脳のcDNAライブラリーより三塩基対反復配列を持つ既知および未知の遺伝子を多数クローニングしたが、それらの遺伝子をFISH法で染色体上の局在を決定すると共に、神経発生に関与すると考えられる遺伝子を検出した。 4。これらの遺伝子の異常の有無を家族性精神遅延患者において検討中である。
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