研究概要 |
髄膜炎患児25例(化膿性3例,無菌性22例)と非髄膜炎患者21例を対象に髄液と,同時に採血した血清,および髄液中単核球を分離して24時間培養して得た培養上清についてIL-10の濃度をELISAを用いて測定し,臨床検査値とともに検討した.また,髄液細胞のmRNAの発現をRT-PCR法により検討した. その結果,1)髄液中のIL-10値は化膿性髄膜炎と無菌性髄膜炎の有症期で,回復期および非髄膜炎群に比べて有意に高値であった.2)髄液中のIL-10値は同時に採取した血清中の各サイトカイン濃度より有意に高値であった.3)髄液単核球の培養上清中のIL-10濃度は高値であった.4)RT-PCR法により髄液炎症細胞にはIL-10のmRNAの発現が認められた.5)髄液中G-CSF, IL-8, IL-6値の平均値は発症日に最高となったが, IL-10値の平均は発症2〜3日目に最高であった. 以上の結果より,髄膜中のIL-10値は髄膜炎の急性期の他に炎症性サイトカインより少し遅れて上昇し,その後低下することが明らかになった.また,髄液中IL-10の少なくとも一部は髄液細胞により産生されると考えられた.IL-10は炎症群サイトカインの産生を抑制することにより炎症反応を抑制することが知られているが,今回の研究を通じて,髄膜炎においてもIL-10は炎症の抑制に働いている可能性が示唆された.
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