研究概要 |
本研究の目的は、日本人ゴ-シェ病の遺伝子変異と臨床表現型を明らかにすることである。本年は日本人ゴ-シェ病32例について、7つのCommon Mutation(84GG,IVS2+1,F213l,N370S,L444P,R463C,D409H)の頻度を解析しその臨床表現型及び人種差について検討した。 日本人ゴ-シェ病ではL444Pが全変異の45%を占め、最も多い変異であった。L444P変異は非ユダヤ人で頻度の高い変異であり、そのHomozygoteは神経型にLinkすると報告されている。これに対し日本人L444PのHomozygoteのほとんどは非神経型を呈しており、臨床表現型における人種の重要性が明らかとなった。F213l変異は全変異の15%を占めるが、日本人以外では1 Alleleの報告があるのみで、本変異は日本人(アジア人)に特徴的であることが考えられた。ユダヤ人ゴ-シェ病の遺伝子変異の約70%を占めるN370S変異は日本人では全く存在しなかった。N370S変異はタイプ1のみに認められ、そのHomozygoteは非常に軽微な臨床症状を呈することが知られている。そこで日本人ゴ-シェ病タイプ1の発症年令、骨合併症、脾摘率を諸外国と比較したところ、日本人においてはいずれも重篤であった(発症年令:7才vs.17才、骨合併症率:48%vs.8%、脾摘率:54%vs.8%)。以上の結果から、日本人ゴ-シェ病の遺伝子変異分布、臨床表現型は諸外国とは非常に異なっていることが明らかとなった。
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