研究目的:川崎病の冠動脈瘤、特に進行する狭窄性病変については血管炎のため血管構成細胞内で潜伏感染していたサイトメガロウイルスが再活性化され、その産生蛋白が癌抑制遺伝子p53蛋白と結合。その結果、p53の機能がブックされるために血管構成細胞が異常増殖能を獲得し、血管内腔の狭窄が進展するとの仮説をたてこれを証明することを目的とした。 1.川崎病冠動脈病変部でのp53蛋白、およびp53遺伝子変異の有無の検討:過去の川崎病剖検材料から冠動脈瘤病変部につきパラフィン抱埋切片を用いてp53蛋白の免疫組織化学的検討を行った。その結果一部の症例において血管構成細胞(平滑筋、内皮細胞、線維芽細胞)にp53陽性細胞を確認した。今後PCR法を用いてのp53遺伝子変異の有無の検討が必要となる。 2.川崎病冠動脈病変部での潜伏性ウイルス感染の有無の検討:川崎病冠動脈瘤の進展にp53蛋白と結合し、その機能を不活化することが知られている種々のウイルス(アデノウイルス、サイトメガロウイルス等)の潜伏感染の有無についてin situハイブリダイゼーションを用いて検討した。上記1の研究でp53陽性細胞の一部にin situハイブリダイゼーションによりサイトメガロウイルスのシグナルを検出したが、シグナル/バックグランド比が低いために、明らかなウイルス関連抗原と結論づけるものではなかった。 今後種々のウイルスについてそのプライマーの設定を決定し、川崎病冠動脈病変部での潜在性ウイルス感染の有無を検討する予定である。また、培養冠動脈構成細胞においてサイトメガロウイルス感染がp53蛋白の安定化等に変化を及ぼすかどうかをin vitroにおいて検討する予定である。
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