研究概要 |
川崎病既往例および冠状動脈病変を認めないコントロール例において,また,動脈硬化病変をもつ成人剖検例に対して血管内エコー図検査を行なった. コントロール群および川崎病例で冠状動脈瘤を認めなかった部位においては,冠動脈血管壁の3層構造は描出されず,内膜の肥厚は認められなかった.一方,急性期冠動脈瘤をみとめ消退した部位(regression)には,血管壁の3層構造が描出され内膜の肥厚を認めた.また狭窄病変部では,強い石灰化を示唆するエコー輝度の増強した病変像を観察しえた.動脈硬化病変をみとめる成人剖検例においては,病理所見と一致した冠状動脈の3層構造が描出され,内膜の著明な肥厚を認めた.腋窩動脈,腸骨動脈の病変では,regressionした部で一部3層構造を認めたが,著明な内膜肥厚を示唆する像は認めなかった.冠動脈狭窄病変をもつ川崎病例に対しロタブレーターを施行した例では,ablation後の冠状動脈内腔が,全周性に石灰化病変で覆われているのが観察できた.また,インターベンション施行前の血管内エコーにて石灰化病変が軽度であった例においては,PTCAを施行したのち有効な内腔が得られ,PTCA後の血管内エコーで,石灰化病変のない血管壁側の拡大が観察できた. 今回の研究結果から,血管内エコー法は,冠状動脈,およびsystemic arteryの壁構造が観察でき,川崎病での動脈病変の程度や,虚血性心臓病のリスクを検討するうえで有用である.特に川崎病既往例で冠動脈壁の3層構造が描出された例では,将来動脈硬化のリスクファクターとなる可能性が示唆された.また,血管内エコー法は,経皮的冠状動脈形成術式の選択のための術前検査としても応用が期待できる.
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