研究概要 |
1,新生児持続性肺高血圧症モデルの作製 新生仔ブタへの低酸素負荷を用いて,新生児持続性肺高血圧症モデル作製を試みた.低酸素かつ高二酸化炭素の条件下で新生仔ブタの肺動脈圧は出生後48時間以内では大動脈圧とほぼ等圧であり,動脈管レベルでの右左短絡が存在することが証明された.この条件下でフローメーターによって調整された10ppmの一酸化窒素ガスを95〜20%の酸素と混合し投与した.肺動脈圧は一酸化窒素投与によって速やかに低下し,中止によって再上昇することが証明された. 2,新生児持続性肺高血圧症に対する一酸化窒素吸入療法の有効性の検討 前年度に作製した装置を用いて新生児持続性肺高血圧症5例に対して一酸化窒素吸入を行い,その効果と血行動態に及ぼす影響を比較検討した.酸素投与(FiO2: 100%)さらに一酸化窒素投与(FiO2: 96%,一酸化窒素濃度40ppm)を施行し,投与前後における推定肺動脈圧,大動脈圧,酸素飽和度について測定を行った.その結果,酸素のみの投与に比し,一酸化窒素投与によって肺動脈圧の有意な低下は認めなかったが,酸素飽和度は平均8%上昇した.心エコーによる評価では心房および動脈管レベルでの右左短絡が確認され,このことが酸素飽和度の改善に関与していることが示唆された. 3,肺組織所見と一酸化窒素吸入療法との関連 新生児持続性肺高血圧症モデルにおける組織所見と一酸化窒素吸入療法の効果との関連は現在のところ認められていない.今後,血管内エコーを用いて生体内での検討を行う予定である.
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