研究概要 |
先天性白皮症はチロジナーゼ陰性型と陽性型に分類される。前者はチロジナーゼ遺伝子の変異により、活性のある酵素蛋白が生合成されないために発症することが富田らにより明らかにされている(BBRC 164:990,1989)。一方、後者のついて、Rinchikらは膜結合性のP蛋白の遺伝子変異により発症すると最近報告した(Nature 361:72,1993)。P蛋白は、アミノ酸の一つであるチロシンのキャリア蛋白である。この蛋白の遺伝子変異により、この蛋白の機能が失われて、メラノソーム内にメラニン生成の出発物質であるチロシンの供給が出来なくなるために、チロジナーゼ陽性型白皮症にメラニン生成が起こらなくなるのであろう。ところでチロジナーゼ陽性型はチロジナーゼ活性が存在するというだけで一つのカテゴリーに分類されているので、P蛋白異常以外の病因も含まれているはずである。本研究の目的は、P蛋白遺伝子を利用した陽性型白皮症の遺伝子診断を確立し、それによって陽性型白皮症患者のうちにP蛋白異常がどの程度占められるのかを、明らかにすることである。そこでまずチロジナーゼ遺伝子の蛋白coding regionに変異のないことが確認されている陽性型白皮症患者のP蛋白遺伝子異常の検索を行ったが、なんら変異は見い出されなかった。この結果は、チロジナーゼ陽性型白皮症には明らかにP蛋白以外の異常により発症する患者が存在することを示している。最近になって、チロジナーゼ以外に、メラニン生成に関与する蛋白の遺伝子がクローニングされた。この二つの蛋白は、チロジナーゼ反応以降のメラニン合成経路の反応に関与する酵素dopa-chrome tautomeraseとDHICA oxidaseであることが明らかとなった。今後チロジナーゼ陽性型白皮症がこれら二つの遺伝子のいずれかの変異によって発症する可能性を考え検討を続ける。
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