我々は本邦における骨髄性プロトポルフィリン症(EPP)好発地域である長崎県、島原地方のEPP患者の遺伝子解析を行った。島原地方EPP患者リンパ球からtotal RNAを抽出し、RT-PCRによりEPPの発生原因酵素であるferrochelatase(FC)のcDNAクローンを作製した。そのうち7クローンについてその塩基配列を決定した。7クローン中7クローンで、FCcDNA287番目の塩基AがGに変異することでアミノ酸もGlnからArgに変化していた。また7クローン中4クローンで、FCcDNA271番目の塩基AがGに変異しており、そのためアミノ酸もArgからGlyに変異していた。さらに7クローン中1クローンでFCcDNA913-1077番目が欠損しており、これはFCのExon9に一致していた。 FCcDNA287番目と271番目のmutationと思われたGおよびAにhybridするprobeを作製し、Allele-Specific Oligonucleotides(ASO)を行ったところ、287番目における変異Gに特異的なprobeは患者とその家族ともすべてhybridした。これは沖縄在住の正常コントロール5人、島原地方の正常コントロール47人とも100%hybridし、さらにアメリカ在住のコントロールも24人中21人がhybridした。287番目における正常probeはアメリカ在住の24人中3例のみにhybridした。このことから正常配列と報告されている287番目の塩基Aは少数派で、大多数はGであり、polymorphismであることがわかった。同様に271番目においてもASOを行ったところ、ここでの変異は発端者のみで、同症のある姉妹では認められず原因となる変異ではないことがわかった。よってこの疾患の原因となる遺伝子変異はExon9の欠損であることが予想され、現在分析中である。この変異が、島原地方の患者の多くにみられるかどうかは、今後さらに解析を続けていく必要がある。
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