研究概要 |
(1)正常皮膚と皮膚悪性腫瘍(BCC:11例、SCC:8例、Paget病:4例、Paget癌:4例、Bowen癌:3例、毛嚢癌:3例)の組織標本を材料とし、細胞接着分子(E-cadherin、desmoglein I、plakoglobin)の発現を各細胞接着分子のモノクローナル抗体を用いた蛍光抗体法により検索した。その結果、それぞれの腫瘍で特徴的な発現パターンを示していた。一般に、浸潤および転移能が高いとされているSCC、Paget癌では、今回検索した細胞接着分子の発現はすべて減弱または消失しており、浸潤および転移能が低いとされているBCCではE-cadherin、desmoglein I、plakoglobinが正常皮膚とほぼ同様の発現を示していた。これらの結果から皮膚悪性腫瘍の浸潤および転移に、今回検索した細胞接着分子が関連していることが示唆された。 (2)ヒト皮膚SCC細胞株を用いて細胞接着分子(E-cadherin,desmoglein I,plakoglobin)の発現に対するDNA阻害剤(bleomycin,cisplatin)の影響について蛍光抗体法,Western blotting法を用いて検索した。その結果,今回用いたSCC細胞株では通常の培養条件では細胞接着分子を発現していたが,DNA阻害剤を作用させることによって濃度依存的,時間依存的に細胞接着分子が減弱または消失することが示され,さらに細胞接着分子が消失するような濃度のDNA阻害剤を作用させても細胞のアポトーシスは起っていないことがわかった。
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