研究概要 |
IL-2Rβトランスジェニック(TG)マウスは現在のところ表皮内T細胞を完全に欠失した殆ど唯一のマウスである。それに対し正常のマウス表皮に豊富に分布するγδT細胞を遺伝的に欠失させたγδknockout(KO)マウスでは代償性にαβT細胞が表皮内に遊走しているため、γδ^+T細胞の機能をみるのには適しているが表皮内T細胞の機能をみるのには必ずしも適していない。つまりIL-2RβTGマウスにおける様々な皮膚の免疫応答をみることにより、マウス表皮内T細胞の機能を知ることが出来る。我々はマウス接触皮膚炎モデルを用いて以下の検討を行った。急性接触皮膚炎ではcontrol(B6)マウスと殆ど差が認められず、わずかに、TGマウスにおいて反応の遷延化が認められたにすぎなかった。それに対し、抗原を繰り返し塗布した結果得られた慢性接触皮膚炎では著明な差が認められた。すなわちcontrolマウスでは3時間をピークとするlate phase reactionを認めるのみであったが、TGマウスではそれに加え30分後の即時型浮腫性反応を認め、抗原特異的IgE産生が認められた。このことは表皮内T細胞は即時型の反応の抑制に働いていることを示唆する。 このように繰り返し抗原を塗布した表皮にはcontrolマウスでは多数のCD8^+,TCRαβ^+/CD3^+T細胞を認めるのに対し、TGマウスでは、これらT細胞は殆ど認められず、わずかにCD8^+,TCR-αβ^-/CD3^-T細胞を認めるのみであった。TGマウスでは本来表皮にホ-ミングすべきCD8^+,TCR-αβ^+/CD3^+T細胞が欠失しているのかTGマウス表皮がそれらT細胞の遊走を許さないのかについて検討を現在行っている。
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