研究概要 |
尋常性天疱瘡(PV)、落葉状天疱瘡(PF)の主要自己抗原であるデスモグレイン3(Dsg3)、デスモグレイン1(Dsg1)の細胞質内(IC)・細胞外(EC)ドメインに対するcDNAをそれぞれPCR法にて増幅し、それぞれリコンビナント蛋白を作製した。これらを抗原として教室内・国内外の天疱瘡群患者103例(尋常性天疱瘡[PV]34例、落葉状天疱瘡[PF]21例、ブラジル天疱瘡[BPF]19例、PVとPFの移行・合併例[PV/PF]8例、増殖性天疱瘡[PVeg]8例、疱診状天疱瘡[PH]4例、paraneoplasitc pemphigs[PNP]9例)と、コントロールとして類天疱瘡(BP)7例、正常人(N)血清との反応を免疫ブロット法を用いて検索した。Dsg3ECドメインに関してはPVの全例に陽性であったほか、その他の天疱瘡群にも陽性所見が散見され、Dsg1ECドメインに関してはPV,PF,BPF,PV/PFで陽性であった。これはヒト表皮抽出物を抗原とした免疫ブロット法よりもやや感度が高かった。Dsg3ICドメインに関してはPV,PFの10から20%に陽性で、PV/PFでは約半数に陽性所見が得られたが、他の天疱瘡群では陽性で、特異性が高いと考えられた。一方、Dsg1ICは各疾患に数例ずつ陽性所見が得られたことより、非特異的な反応の可能性も考えられた。ヒトデスモグレインICに対する天疱瘡群血清の反応性についてはこれまでに報告がないが、今回の研究で特にDsg3ICに関してはPV/PFに陽性率が高いことがわかり、病型の移行・合併において細胞質内蛋白に対する自己抗体が発症に関与している可能性が示唆された。今後、同一症例での異なった時期における血清中の自己抗体の推移についてさらに検討を加えてゆきたい。
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