研究概要 |
局所制御成績に影響を及ぼす因子を検討する目的で、Cox比例ハザードモデルによる多変量解析を行った。1983年11月〜1995年3月までに陽子線照射が施行された肝細胞癌患者117名(男性93名、女性24名、平均年齢61.3歳)139病変のうち、照射部位の変化が6ヶ月以上観察可能であった(主にCTによる)111病変を解析対象とした。局所制御成績に影響を及ぼす可能性のある因子として、1)照射部位、2)照射野内腫瘍数、3)照射野内最大腫瘍径、4)併用療法の有無(6ヵ月以内)、5)TDF、6)呼吸同期の有無、の6つを取り上げ、多変量解析を行った。各因子の単変量解析結果を次に示す。1)照射部位;右葉93病変(再発6病変)、左葉18病変(再発1病変)であった(P=0.9944)。2)照射野内腫瘍数;1個102病変(再発7病変)、2個以上9病変(再発なし)であった。3)照射野内最大腫瘍径;腫瘍径は1.0cm〜10.0cmで、平均3.9±2.1cmであった。5cm未満は85病変(再発4病変)、5cm以上は26病変(再発3病変)であった(P=0.2775)。4)併用療法の有無;陽子線単独50病変(再発6病変)、併用61例(再発1病変)であった(P=0.0570)。併用療法はTAE(Lipiodol-targeted chemoembolizationを含む)が58病変、TAE+PEITが2病変、PEITが1病変であった。5)TDF; TDFは64.1〜187.4で、平均168.2±19.5であった。170未満は45病変(再発3病変)、170以上は66病変(再発4病変)であった(P=0.9333)。6)呼吸同期の有無;「なし」が35病変(再発3病変)、「あり」が76病変(再発4病変)であった(P=0.9258)。照射野内腫瘍数を除く5つの因子について、多変量解析を行った結果、統計学的に有意な因子は認められなかった。唯一、併用療法の有無が局所制御に影響を及ぼしている傾向があった(P=0.0507)。すなわち、陽子線単独群は併用療法群に比較して8.7倍再発の危険がある可能性が示唆された(Oddsratio=8.723,95%Confidence Interval=0.994-76.571)。陽子線単独50病変(再発6病変)、併用61例(再発1病変)の累積局所制御率は、1年;97.6%vs100%、2年;80.5%vs100%、3年;80.5%vs94.4%で、有意に(P=0.0242)併用群で良好であった。
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