研究概要 |
【方法】最初に球形、線状のファントームを作成して、それぞれのポジトロン断層像(PET)を撮像した。この画像上のファントームのプロフィルカーブを正規分布曲線でフィッティングし、Z軸方向、XY平行方向のぼけの広がり関数(spread function)を得た.また2-40mmのサイズの球状ファントームを撮像しPET値のrecovery曲線をえた.次にデジタルファントームを作成した.このファントームは脳の灰白質,白質,脳脊髄液に相当する三つの区画から構成されていた.これら3区画にはそれぞれの血中から血液脳関門を越えて神経細胞に入る速度定数K1と洗い出しの速度定数K2を仮定しておいた.それぞれにトレーサーの経時的に変化する入力関数を与えると各区画の時間放射能曲線が得られた.これに最初に得られたspread functionを重畳積分するとPET相当の画像が得られた.以上のデータを重みづけ積分法(weighted integration,WI)とスペクトル解析法(spectral analysis,SA)を用いてK1とk2の値をpixel by pixelで計算し定量画像を得た.【結果】一つのピクセル中,単一の区画から寄与しかない場合はWI,SAともに仮定したK1,k2値が得られた。白質と灰白質が混成したピクセルではSAがその寄与度に比例した線形の値を出したのに対し,WIでは非線形の誤差が生じた.PET画像の信号ノイズ比(S/N)が小さい場合はSAでは誤差が大きくなり計算不能になる場合もあったが,WIでは比較的ノイズに強い特性を示した.このようにSAはノイズが充分な範囲で小さければ1ピクセル中における各分画の寄与度を正確にとらえることが分かった.部分容積効果を評価する方法として有用である可能性が示唆された.
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