研究概要 |
造影MRIを用いた定量的評価によって、肺野腫瘤病変における肺癌と他疾患との鑑別診断への応用を目的として研究を行った。対象とした症例はは石灰化のない肺野腫瘤病変(長径30mm以下5mm以上)51例で、その内訳は肺癌手術例31例、手術または臨床的に良性腫瘤と診断された20例(結核腫13例、非特異的肉芽腫5例、過誤腫2例)であった。1.5T超伝導装置を用い、Spin Echo法TR : 500msec,TE : 20msecで横断像を撮像した。造影剤としてGd-DTPA 0.1mmol/kgを静注し投与前後で腫瘤内部の信号強度を比較検討した。 以上の結果として、肺癌31例の造影後の信号強度は造影前に比べ75.6±24.2%(平均±標準偏差)上昇し、良性腫瘤20例全体の信号強度の上昇(33.0±39.2%)と比較して有意差(p<0.001)がみられた。良性腫瘤のうち、結核腫は11.0±9.1%、非特異的肉芽腫95.0±33.0%、過誤腫51.0±19%の上昇で、肺癌と結核腫の間には上昇率に有意差がみられ重なりがなかったが、肉芽腫との間には有意差がみられず、特に小さい腫瘤で肺癌との間に重なりがみられた。過誤腫は不均一に造影され、腫瘤内のよく造影される部分と肺癌では、信号強度の上昇率に有意差はみられなかった。25%以上の上昇率を悪性とした際の、悪性であるpositive predictive valueは81.5%、negative predictive valueは100%であった。 造影MRIによる定量的評価では、悪性であることの診断には、単独では必ずしも十分でない場合があるが、信号強度の上昇が小さい場合は良性(結核腫)であるといえ、肺腫瘤の中から石灰化のない結核腫を鑑別診断するには有用であることが研究成果として得られた。
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