我々は、核医学的手法(Tl-201 scintigraphy)を用いて、悪性腫瘍における化学療法の効果判定における有用性を実験腫瘍を用いて検討した。 悪性腫瘍であるWalker-256腫瘍をWistar系ラットに移植し抗癌剤であるAdriamycin(ADR)による治療前後に本法を試み、腫瘍への集積能と病理組織学的変化について比較検討した。Tl-201の集積が腫瘍の増殖性を反映するとすれば治療後の腫瘍においては集積が低下すると考えられるが、今回の実験ではTl-201 scintigraphyにおいては治療前後で集積の低下は認められなかった。治療後の腫瘍の病理学的変化としては治療直後の腫瘍細胞は治療前と比べ形態的に明らかな変化が見られなかったが、免疫染色によりアポトーシス小体の出現が確認できた。しかし治療前にも同様の変化が見られ、明らかな差が見られなかった。治療後縮小過程にある腫瘍組織においては腫瘍細胞は著明に減少し、リンパ球の著しい浸潤を認めた。これは腫瘍免疫に起因する反応と考えられ、治療後もTl-201の集積が低下が認められないのはこれらの細胞へのTl-201の集積に起因したものと推測され、活性化されたリンパ球にも腫瘍細胞と同程度のTl-201が集積し得ると考えられた。このためTl-201 scintigraphy上は腫瘍免疫により浸潤したリンパ球を腫瘍細胞の残存と鑑別できないと考えられた。実験腫瘍での化学療法による治癒過程は臨床例とは違いがあると考えられるが、化学療法の治療効果判定にTl-201 scintigraphyを用いると、治療効果を過小評価する可能性があることが示唆された。本研究の結果は現在投稿準備中である。
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