二次発癌の原因は現在のところ放射線照射や化学療法により生ずる遺伝子の突然変異と考えられているが、その同定法は確立されていない。癌治療には放射線や抗癌剤が多種多様な方法で併用されている現在、その危険性を予測するために短期間で行える細胞または動物実験レベルでのスクリーニングが必要である。本研究では、多種多様な放射線療法と化学療法の併用により発生すると推測される突然変異を、新たな試みとして、比較的検出が簡単であるhypoxanthine-guanine phosphorybosyl tranceferase (hprt) locusの変異を指標として検出し、二次発癌の可能性を予測する方法を開発することを目的とした。 V79細胞を単層培養にて増殖させ、対数増殖期の細胞に2 Gyの放射線照射を施行する。放射線照射の前または後に、培養液中にサイクロファスファマイド、アドリアマイシン、シスプラチンの化学療法剤を、各種の濃度の組合せで30分間作用させ、2-6Gy線量を化学療法剤と照射の間隔を1-12時間とした。10^6個の生存細胞を培養し6日間のexpression periodをおく。6日目に6-チオグアニン(10μg/ml)を含む培養液中に細胞をまき(培養液1mlあたり10^4個の濃度が適当である)、hprt locusの変異を起こした細胞のみ増殖させ、1週間後に形成されたコロニーの数から細胞10^6個あたりの変異数を計算する。この検討からは化学療法剤を併用することにより、放射線照射単独の場合より変異の出現が多くなるとは言えなかった。動物実験でマウスの脾臓を照射し、8週間のexpression periodの後、マウスより脾臓を摘出し脾細胞の単細胞浮遊液を作成する。数回の洗浄の後Histopaqueを通してリンパ球分画を得て、hprt locusの変異の出現頻度を検討したが、細胞細胞で得られた結果と同様であった。
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