多くの分化誘導物質が報告されてきたが、そのメカニズムは様々であり、その効果も一定しているとは言えない。よって、これまで行われてきた治療法と同様で、分化誘導療法も単独で腫瘍を根治させることは困難であろう。他の治療法との併用の必要性が示唆される。放射線療法は多くの腫瘍に対して、腫瘍縮小効果を示し、根治させることが可能である。しかし、再発も日常経験され、その大きな原因の1つに、治療期間中の腫瘍細胞の再増殖があげられている。本研究は、各種ヒト悪性腫瘍由来培養細胞に各種の分化誘導物質を作用させ、細胞増殖速度を抑制できる組合わせを明らかにし、分割照射による放射線治療効果改善に及ぼす影響を検討する。 ヒト悪性腫瘍から作成された培養細胞25種を(食道癌由来扁平上皮癌6種、子宮頚癌由来細胞扁平上皮癌4種、子宮体内膜腺癌5種、卵巣癌由来腺癌4種、神経芽細胞腫3種、子宮肉腫由来平滑筋肉腫1種、子宮絨毛上皮腫1種、悪性黒色腫1種)を用いて、放射線感受性テストは予定の細胞総てに遂行でき、目的を達成した。生存曲線上は悪性黒色由来の細胞は極めて放射線感受性が低かったが、多くの細胞は類似した生存曲線を示した。ヒト由来の細胞は動物由来細胞V79等と比較すると、一般的に放射線感受性が高く、また、小線量照射時に生存曲線上見られる"肩"も小さかった。放射線感受性は腺癌と扁平上皮癌由来細胞の間に差はみられなかった。腫瘍細胞に及ぼす薬剤濃度の影響を検討するため、単層培養細胞の培養液に10^<-6>〜10^<-10>Mの各種レチレイン酸(オールトランスRA)を混和し、腫瘍細胞の増殖曲線により、細胞増殖に薬剤が影響を及ぼさない最大濃度を求めた。10^<-8>Mのレチレイン酸を加えた培地中で培養した細胞に放射線照射を行ったが、薬剤処理を行わない細胞と同様の放射線感受性で、分化誘導の効果が不明であった。
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