研究概要 |
本研究課題に関する昨年度までの検討より,脳内神経伝達物質であり精神疾患との関連が強いドーパミンの生合成前駆体であるドーパの誘導体,6-[^<123>I]-L-DOPA(^<123>I-DOPA)が脳のドーパ膜輸送機能を選択的に測定し得る放射性診断薬として優れた性質を有することを明らかにした.本年度は更に詳細な検討を進めると共に,^<123>I-DOPAが臨床現場で容易に部位選択的に標識でき,更に品質管理の簡便化が期待できる固相化標識法の確立を試みた.固相化標識では,ハロゲンと置換し易い金属脱離基を予め標識原料に導入し,その脱離基を樹脂と結合させることにより,標識後,未反応原料は樹脂にとどまり,標識体のみが溶液中に容易に得られる利点を有する. 6位水銀置換DOPA前駆体(6MPD)をカルボン酸を介して樹脂と結合させた二種の6MPD結合カルボン酸樹脂を合成した.また,その反応性を評価するために,非放射性ヨウ素化及び無担体放射性ヨウ素標識を試み,モノマー体6MPDと比較した.その結果,これらの樹脂は6MPDと同等かそれを上回る高いヨウ素化収率,標識率を示した.以上より,^<123>I-DOPAの高い標識率を示す部位選択的固相化標識法が確立された.更に,既に臨床使用されている6-[^<18>F]-L-DOPAがドーパミン代謝全般を反映することが報告されていることから,フッ素化に関しても上記固相化標識法の応用を試みた結果,従来法に匹敵するフッ化収率を示すなど良好な結果を得られた. 一方,脳内神経伝達物質の生合成酵素活性あるいはアミノ酸を直接神経伝達物質として利用している神経系の受容体機能の診断を目的として,アミノ酸膜能動輸送機構により脳に高く集積する基質や阻害剤誘導体をデザインし,それらの標識原料の合成を試みると共に,一部のものに関しては標識・精製法を確立し,予備的検討を開始した.これらの検討に関しては,今後も継続して行う予定である.
|