キノリン酸は、興奮性アミノ酸レセプターのアゴニストであり、実験動物の脳内に投与すれば、けいれん発作を誘発することが知られている。また、この物質は遺伝的てんかんモデルのElマウスやてんかん患者の脳脊髄液中において増加していることが確認されている。キノリン酸は、トリプトファンからキヌレニンを経て、3-ヒドロキシアンスラニル酸より生合成される。3-ヒドロキシアンスラニル酸は、3-ヒドロキシアンスラニル酸3、4-ジオキシゲナーゼ(3-HAO)により開環され2-アミノ-3-カルボキシムコン酸セミアルデヒドとなり、非酵素的に閉環してキノリン酸となる。しかし、アミノカルボキシムコン酸セミアルデヒドカルボキシラーゼ(ACMSD)が存在すると、ほぼすべての2-アミノ-3-カルボキシムコン酸セミアルデヒドは、ピコリン酸となる。本研究では、この神経毒性を持つキノリン酸の脳内での調節に関して、3-HAOおよびACMSDに着目し、てんかん発作の発現機序について調べた。ACMSDについては、現在までにDEAE-セルロース、セファクリルS-300、ハイドロキシアパタイトの3種類のカラムクロマトグラフィーを組み合わせ約10.000倍精製しているが、未だ単一化に成功していない。発育期における3-HAO、ACMSD両酵素活性の変化について調べたところ、ACMSD活性に有意の変化は認められなかった。3-HAO活性については生後8週より活性の増加が認められ生後10週では約70%の増加となっていた。
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