ヒトのsleepinessやalertnessは、1日の内で大きく変動する。そこで我々は24時間の断眠後に20分間の睡眠、40分間の覚醒という短周期の睡眠・覚醒を24時間にわたり繰り返し、同時に直腸温の測定を行うことにより、sleepinessと体温リズムの経時的な変化を検討した。 対象は10人の男子大学生で、直腸温の連続記録を行いながら24時間の断眠後に20分間の睡眠、40分間の覚醒を交互に24時間にわたり行った。さらに対照実験として、断眠中に光照射を行い、さらに冬期と夏期の季節間の変動を検討した。 いずれの実験においても、23時頃の睡眠量の最も少なくなる時間帯(Forbidden zones)が存在した。本来体温リズムと睡眠・覚醒リズムは連動して変化するものであるが、Forbidden zonesは夏期では冬期に較べて前進し、直腸温の頂点位相は逆に後退していた。しかし20分間の睡眠中の直腸温の大きな低下を示した時間は、冬期の実験と夏期の実験のいずれにおいても、Forbidden zonesの後の睡眠のセッションで認められた。このことは体温リズムの下降期の中でも、特に大きな体温の低下がヒトの入眠のタイミングとして重要となることを示唆するものである。 しかし6時間の高照度光照射により、Forbidden zonesは光照射を行わなかった実験に較べ1時間の後退を示したが、その後の睡眠のセッションで認められた直腸温の低下が消失していた。最小自乗法による検討では、光照射により体温リズムの頂点位相は70〜80分後退し、約0.1度の体温上昇が認められたことより、これは光照射が、睡眠・覚醒リズムや体温リズムの位相への影響が存在する一方で、体温の振幅に対する影響が強く出現したと考えられた。
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